2024年3月4日月曜日

アフリカの日系企業まとめ【ソーシャルビジネスから投資まで】

 暖かくなったり寒くなったり落ち着かない今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。私は新しい仕事にもどうにか慣れてきたところです(仕事自体よりも朝ラッシュに慣れるほうが大変……)。

さて、今回は「転職活動中に調べたことを共有する回」の続編として、アフリカで活動している日系企業(*)について個社ごとの概要を書いていきます。いや転職活動してたの何ヶ月前だよって話ですが、遅筆なので仕方ないですね。

実際に就職した企業は別のところですが、インターネット検索で色々と調べたので(**)その内容を共有したいと思います。社名に各社HPへのリンクを貼っていますので気になる会社があればぜひ飛んでみてください。インフラ・金融・コンサル分野の企業が多めです。

社会課題解決を目指すソーシャルビジネスもあれば、アフリカ経済のポテンシャルに注目して事業や投資を行っている会社もあり、アフリカの日系企業といっても様々です。NGOや前回取り上げた開発コンサルともまた違っていて興味深いです。アフリカや途上国に関心のある方のお役に立てば幸いです。

(ただし、今回取り上げる会社リストは網羅的ではなく、何か明確な基準に基づいているわけでもない点はご留意ください。また基本的にスタートアップや中小規模の企業を調べたため、例えば大手商社などもアフリカで事業展開していますがそういった大企業は含まれていません。)

(*)ここでは日本に本社がある、または代表が日本人の企業を日系企業と呼んでいます。

(**)以下に挙げるなかには私が内部の方に直接お話を伺った会社さんもありますが、そこで聞いた内容については掲載許可を取っていないため、あくまでインターネットなどで収集できる情報のみを記載しています。

(ケニアの首都ナイロビの街。けっこう栄えている)

 

事業会社

1. WASSHA

[事業国]タンザニア、ウガンダ、モザンビーク

アフリカの電気のない地域で太陽光充電式ランタンのレンタル事業を行っています。5000店舗以上のキオスクを介して、毎日10万世帯を超える人々にサービスを提供しています。今後も事業拡大予定で資金調達にも積極的です。


2. Dots for

[事業国]ベナン、セネガル

西アフリカの農村地域でインターネット接続プラットフォームを運営しています。従来の一極集中型のネットワークではなく分散型無線ネットワーク技術を使うことで、人口密度が低くインフラが未整備な農村地域での事業実施を可能にしています。

参考:創業者・大場氏のインタビュー記事 https://www.shibuyamov.com/interviews/-dots-for.html


[事業国]セネガル、フランス

西アフリカや欧州仏語圏でICT事業の実績があり、それを活かして2018年からセネガルの未電化・未電波地域で電気と通信をセットにして届ける国際事業を実施しています。具体的には、小電力特化の発電・通信機材の提供と、高速通信イントラネットサービスの2つを展開しています。


4. SUNDA

[事業国]ウガンダ

ウガンダ農村部の水問題を解決するため、従量課金型の自動井戸料金回収サービスを提供しています。人力では井戸の使用料をうまく回収できずに維持管理が難しかったところ、自動化することで安全・公平かつ効率的に回収し、持続的な維持管理の実現を目標にしています。

(ケニアの枯れ川(再掲)。アフリカの地方部では水へのアクセスが死活問題となっている)


5. SENRI

[事業国]ケニア、ウガンダ、ナイジェリア、インドネシア

モバイルアプリを使ってアフリカの小売店とメーカーが直接商品を受発注するプラットフォーム「SENRI」を運営しています。それまでメーカーの営業担当が手書きで管理していた受発注業務を効率化するもので、サポート体制の構築や大企業との提携により大きな売上を上げています。

参考:創業者・永井氏のインタビュー記事 https://signal.diamond.jp/articles/-/435


6. HAKKI AFRICA

[事業国]ケニア

マイクロファイナンスなど中小規模の金融機関向けに、信用スコアリングパスポートの開発を実施しています。信用スコアリングを使うことで金融機関はリスクを抑えながら大きな額の融資が可能になるため、ケニアの人々がビジネスを行う助けになります。


7. LINDA PESA

[事業国]タンザニア

スモールビジネス向け経営管理アプリの提供と、アプリを通じて得られたデータをもとにした与信及び融資を行っています。アフリカの中小企業の多くは金融サービスへのアクセスがないため、信用情報を見える化することでそのギャップを埋めることを目指しています。

参考:創業者・山口氏のインタビュー記事 https://sogyotecho.jp/lindapesa-yamaguchi-interview/


8. Degas

[事業国]ガーナ

小規模農家に対して農業資材の融資と営農支援を行っています。金銭ではなく農薬などの資材を融資し収穫物の形で返済してもらうことで、融資が他のものに使われてしまうリスクを回避しています。データ技術を駆使して与信管理を行い、23年時点で融資先が2.6万軒まで拡大しています。

参考:創業者・牧浦氏のインタビュー記事 https://forbesjapan.com/articles/detail/66589

(ナイロビの露天商で売られている野菜)

ベンチャーキャピタル

上で挙げた8社はいずれも事業会社(日常的な営業活動で利益を目指す会社。大体の会社はこれ)ですが、ここからご紹介する2社はベンチャーキャピタルになります。

ベンチャーキャピタルをすごくざっくり説明すると、「ベンチャー企業に対して投資をする会社」のことです。設立間もない企業の多くは資金が不足しているため、ベンチャーキャピタルなどから投資してもらうことで成長を目指します。ベンチャーキャピタルからすると、投資先が成長すれば利益を得られ、逆に失敗すると損になるため、投資先のベンチャーに対して資金だけでなく色々なアドバイスを行うこともあります。


9. Kepple Africa Ventures

[拠点国]ケニア、ナイジェリア

[投資対象]アフリカの11か国(カメルーン、コートジボワール、エジプト、ガーナ、ケニア、モロッコ、ナイジェリア、セネガル、南アフリカ、チュニジア、ウガンダ)

アフリカの11か国で100社以上の現地スタートアップへの投資を行っています。アフリカのスタートアップ企業の成長をサポートし、日本企業と協業する仕組みを作り出すことで、新しい産業を創るためのプラットフォーム機能を拡大しグローバルに展開していくことを目指しています。


10. SAMURAI INCUBATE

[拠点国]日本

[投資対象]アフリカの8か国(ナイジェリア・ケニア・エジプト・ガーナ・ルワンダ・ウガンダ・タンザニア・南アフリカ)、イスラエル、日本

設立初期のスタートアップを中心に、国内外で累計240社以上のスタートアップに投資・支援をしてきました。アフリカへは2018年から出資していて、2021年には総額20億円超の「Samurai Africa Fund 2号」を組成しています。

(ナイロビの高級イタリアン。地方と異なりナイロビには富裕層向けの店も存在する)

経営コンサルティング会社

ここではアフリカビジネスに関わる経営コンサルティング会社を3社ご紹介します。「コンサルティング」という言葉が指す通り、顧客である企業や組織が抱えている課題を解決するための提案や助言を行うことが主な仕事になります(ちなみに私がいま属しているのも経営コンサル企業ですが、残念ながらアフリカの案件は現状扱っていません)。

開発コンサル企業とどう違うのか?というと、ODAを主財源とする日系の開発コンサルに対し経営コンサルは営利企業を主要顧客にしているので、両者は基本的には別物と考えられています。ですが近年は境界が曖昧になってきている部分もあり、それはこの章の最後で触れようと思います。


11. AAIC (Asia Africa Investment & Consulting)

[拠点国]シンガポール、日本、中国、ケニア、ナイジェリア、南アフリカ、エジプト

日系企業がアフリカなど海外に展開する際の市場調査や戦略立案、実行支援などのコンサルティング案件を多く扱っています。また、アフリカ専用ファンドを設立したり、ルワンダでマカデミアナッツ農園を運営したりとベンチャーキャピタルや事業会社としての側面ももっています。

代表の椿氏の著作『超加速経済アフリカ: LEAPFROGで変わる未来のビジネス地図』はアフリカの経済について網羅的に知識を得られるのでオススメです。


12. Axcel Africa

[拠点国]ケニア

社会課題解決型ビジネスを顧客企業と共に創出することを目指し、ケニアを拠点に日系企業のアフリカ進出サポートや、現地スタートアップの支援に取り組んでいます。また、日本やアフリカ諸国の企業・ヒトを繋げることを目的に、ナイロビでのコミュニティハウス運営やウェブメディアでの情報発信、マッチングサービス提供などを行っています。


13. Africa Business Partners

[拠点国]日本、ケニア、南アフリカ、ナイジェリア、エチオピア、コートジボワール

日系企業のアフリカビジネスに特化したコンサルティング企業で、顧客企業に対して様々なコンサルティングサービスを提供しています。また、日本企業のアフリカ進出事例データベースや、アフリカビジネスの基礎知識、最新のトピックスなどの情報をホームページ上で公開しています。


14. 経営コンサルによるJICA案件の受注

最後に、経営コンサルティング企業がJICAから案件を受注するケースについてご紹介します。経営コンサル企業はこれまで主に営利企業を対象にビジネスをしていましたが、近年はドリームインキュベータやデロイトといった大手がJICAの案件を受注することが増えてきています。ざっと調べた限りではアフリカよりもアジアの案件が多いようですが、今後アフリカの案件も増えていく可能性があります。

一方で、前回の記事でも軽くお伝えしましたが、開発コンサル企業がJICAの民間連携などのスキームを使って営利企業向けのサービスを提供することもあります。そのため将来的に経営コンサルと開発コンサルの垣根はなくなっていくかもしれません。


まとめ

調べてみて、ここ10年ほどの間に設立された企業が多い印象を受けました。もちろんベンチャーなどの中小企業を中心に取り上げたのでそのぶん若い企業が多いのもありますが、私が大学生のころと比べるとアフリカに関わる日系企業は増えているような気がします。社会課題解決型の企業の増加やアフリカ経済への関心の高まりが背景にあるのかもしれません。とても良い傾向だと思います。

また、営利活動の持続性の高さをあらためて実感しました。寄付や助成金を財源とする非営利活動と比べて、事業自体から収入を得られる営利活動は赤字にならない限りずっと続けられるという強みがあります。一方で非営利活動でしか対応できない領域もあるので、営利活動と非営利活動をうまく組み合わせられれば営利・非営利両方の活動の幅がもっと広がるのでは、という気がしています。例えば類似の事業を複数地域で実施し、収益性の高い地域(人口密集地など)で得た利益を使って収益性の低い地域(人口分散地など)での活動費用を補填する、というようなことが考えられるのではないかと。

昨年の転職活動中、アフリカに関わる営利企業を調べようとしても取っ掛かりになる資料がなくなかなか苦労しました。これが開発コンサルであれば『国際協力キャリアガイド』が助けになりますし、営利企業全般については『会社四季報 業界地図』などを読むことである程度把握できますが、アフリカの日系企業に特化した類似の資料はほとんど見当たりませんでした(*)。それもあって、今回自分の気になった企業だけでも紹介してみました。

(*)例外として、Africa Business Partnersの出しているリストは網羅的で助かります。ただ、掲載企業数がとても多いので全ての企業を調べることは難しく、ある程度自分でピックアップする必要があります。

ちなみに、今回取り上げた企業のなかには公式や代表者のツイッターアカウント(未だにXという名称に抵抗がある)で情報を発信しているところもあるので、フォローしてみるのをおすすめします。特に企業同士が相互フォローなことも多く、気になる企業を一社見つけたらそのアカウントのフォロー先を辿ると別の面白い企業が見つかるかもしれません。それではまた。

(帰国直前に撮ったナイロビの空)