2024年3月4日月曜日

アフリカの日系企業まとめ【ソーシャルビジネスから投資まで】

 暖かくなったり寒くなったり落ち着かない今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。私は新しい仕事にもどうにか慣れてきたところです(仕事自体よりも朝ラッシュに慣れるほうが大変……)。

さて、今回は「転職活動中に調べたことを共有する回」の続編として、アフリカで活動している日系企業(*)について個社ごとの概要を書いていきます。いや転職活動してたの何ヶ月前だよって話ですが、遅筆なので仕方ないですね。

実際に就職した企業は別のところですが、インターネット検索で色々と調べたので(**)その内容を共有したいと思います。社名に各社HPへのリンクを貼っていますので気になる会社があればぜひ飛んでみてください。インフラ・金融・コンサル分野の企業が多めです。

社会課題解決を目指すソーシャルビジネスもあれば、アフリカ経済のポテンシャルに注目して事業や投資を行っている会社もあり、アフリカの日系企業といっても様々です。NGOや前回取り上げた開発コンサルともまた違っていて興味深いです。アフリカや途上国に関心のある方のお役に立てば幸いです。

(ただし、今回取り上げる会社リストは網羅的ではなく、何か明確な基準に基づいているわけでもない点はご留意ください。また基本的にスタートアップや中小規模の企業を調べたため、例えば大手商社などもアフリカで事業展開していますがそういった大企業は含まれていません。)

(*)ここでは日本に本社がある、または代表が日本人の企業を日系企業と呼んでいます。

(**)以下に挙げるなかには私が内部の方に直接お話を伺った会社さんもありますが、そこで聞いた内容については掲載許可を取っていないため、あくまでインターネットなどで収集できる情報のみを記載しています。

(ケニアの首都ナイロビの街。けっこう栄えている)

 

事業会社

1. WASSHA

[事業国]タンザニア、ウガンダ、モザンビーク

アフリカの電気のない地域で太陽光充電式ランタンのレンタル事業を行っています。5000店舗以上のキオスクを介して、毎日10万世帯を超える人々にサービスを提供しています。今後も事業拡大予定で資金調達にも積極的です。


2. Dots for

[事業国]ベナン、セネガル

西アフリカの農村地域でインターネット接続プラットフォームを運営しています。従来の一極集中型のネットワークではなく分散型無線ネットワーク技術を使うことで、人口密度が低くインフラが未整備な農村地域での事業実施を可能にしています。

参考:創業者・大場氏のインタビュー記事 https://www.shibuyamov.com/interviews/-dots-for.html


[事業国]セネガル、フランス

西アフリカや欧州仏語圏でICT事業の実績があり、それを活かして2018年からセネガルの未電化・未電波地域で電気と通信をセットにして届ける国際事業を実施しています。具体的には、小電力特化の発電・通信機材の提供と、高速通信イントラネットサービスの2つを展開しています。


4. SUNDA

[事業国]ウガンダ

ウガンダ農村部の水問題を解決するため、従量課金型の自動井戸料金回収サービスを提供しています。人力では井戸の使用料をうまく回収できずに維持管理が難しかったところ、自動化することで安全・公平かつ効率的に回収し、持続的な維持管理の実現を目標にしています。

(ケニアの枯れ川(再掲)。アフリカの地方部では水へのアクセスが死活問題となっている)


5. SENRI

[事業国]ケニア、ウガンダ、ナイジェリア、インドネシア

モバイルアプリを使ってアフリカの小売店とメーカーが直接商品を受発注するプラットフォーム「SENRI」を運営しています。それまでメーカーの営業担当が手書きで管理していた受発注業務を効率化するもので、サポート体制の構築や大企業との提携により大きな売上を上げています。

参考:創業者・永井氏のインタビュー記事 https://signal.diamond.jp/articles/-/435


6. HAKKI AFRICA

[事業国]ケニア

マイクロファイナンスなど中小規模の金融機関向けに、信用スコアリングパスポートの開発を実施しています。信用スコアリングを使うことで金融機関はリスクを抑えながら大きな額の融資が可能になるため、ケニアの人々がビジネスを行う助けになります。


7. LINDA PESA

[事業国]タンザニア

スモールビジネス向け経営管理アプリの提供と、アプリを通じて得られたデータをもとにした与信及び融資を行っています。アフリカの中小企業の多くは金融サービスへのアクセスがないため、信用情報を見える化することでそのギャップを埋めることを目指しています。

参考:創業者・山口氏のインタビュー記事 https://sogyotecho.jp/lindapesa-yamaguchi-interview/


8. Degas

[事業国]ガーナ

小規模農家に対して農業資材の融資と営農支援を行っています。金銭ではなく農薬などの資材を融資し収穫物の形で返済してもらうことで、融資が他のものに使われてしまうリスクを回避しています。データ技術を駆使して与信管理を行い、23年時点で融資先が2.6万軒まで拡大しています。

参考:創業者・牧浦氏のインタビュー記事 https://forbesjapan.com/articles/detail/66589

(ナイロビの露天商で売られている野菜)

ベンチャーキャピタル

上で挙げた8社はいずれも事業会社(日常的な営業活動で利益を目指す会社。大体の会社はこれ)ですが、ここからご紹介する2社はベンチャーキャピタルになります。

ベンチャーキャピタルをすごくざっくり説明すると、「ベンチャー企業に対して投資をする会社」のことです。設立間もない企業の多くは資金が不足しているため、ベンチャーキャピタルなどから投資してもらうことで成長を目指します。ベンチャーキャピタルからすると、投資先が成長すれば利益を得られ、逆に失敗すると損になるため、投資先のベンチャーに対して資金だけでなく色々なアドバイスを行うこともあります。


9. Kepple Africa Ventures

[拠点国]ケニア、ナイジェリア

[投資対象]アフリカの11か国(カメルーン、コートジボワール、エジプト、ガーナ、ケニア、モロッコ、ナイジェリア、セネガル、南アフリカ、チュニジア、ウガンダ)

アフリカの11か国で100社以上の現地スタートアップへの投資を行っています。アフリカのスタートアップ企業の成長をサポートし、日本企業と協業する仕組みを作り出すことで、新しい産業を創るためのプラットフォーム機能を拡大しグローバルに展開していくことを目指しています。


10. SAMURAI INCUBATE

[拠点国]日本

[投資対象]アフリカの8か国(ナイジェリア・ケニア・エジプト・ガーナ・ルワンダ・ウガンダ・タンザニア・南アフリカ)、イスラエル、日本

設立初期のスタートアップを中心に、国内外で累計240社以上のスタートアップに投資・支援をしてきました。アフリカへは2018年から出資していて、2021年には総額20億円超の「Samurai Africa Fund 2号」を組成しています。

(ナイロビの高級イタリアン。地方と異なりナイロビには富裕層向けの店も存在する)

経営コンサルティング会社

ここではアフリカビジネスに関わる経営コンサルティング会社を3社ご紹介します。「コンサルティング」という言葉が指す通り、顧客である企業や組織が抱えている課題を解決するための提案や助言を行うことが主な仕事になります(ちなみに私がいま属しているのも経営コンサル企業ですが、残念ながらアフリカの案件は現状扱っていません)。

開発コンサル企業とどう違うのか?というと、ODAを主財源とする日系の開発コンサルに対し経営コンサルは営利企業を主要顧客にしているので、両者は基本的には別物と考えられています。ですが近年は境界が曖昧になってきている部分もあり、それはこの章の最後で触れようと思います。


11. AAIC (Asia Africa Investment & Consulting)

[拠点国]シンガポール、日本、中国、ケニア、ナイジェリア、南アフリカ、エジプト

日系企業がアフリカなど海外に展開する際の市場調査や戦略立案、実行支援などのコンサルティング案件を多く扱っています。また、アフリカ専用ファンドを設立したり、ルワンダでマカデミアナッツ農園を運営したりとベンチャーキャピタルや事業会社としての側面ももっています。

代表の椿氏の著作『超加速経済アフリカ: LEAPFROGで変わる未来のビジネス地図』はアフリカの経済について網羅的に知識を得られるのでオススメです。


12. Axcel Africa

[拠点国]ケニア

社会課題解決型ビジネスを顧客企業と共に創出することを目指し、ケニアを拠点に日系企業のアフリカ進出サポートや、現地スタートアップの支援に取り組んでいます。また、日本やアフリカ諸国の企業・ヒトを繋げることを目的に、ナイロビでのコミュニティハウス運営やウェブメディアでの情報発信、マッチングサービス提供などを行っています。


13. Africa Business Partners

[拠点国]日本、ケニア、南アフリカ、ナイジェリア、エチオピア、コートジボワール

日系企業のアフリカビジネスに特化したコンサルティング企業で、顧客企業に対して様々なコンサルティングサービスを提供しています。また、日本企業のアフリカ進出事例データベースや、アフリカビジネスの基礎知識、最新のトピックスなどの情報をホームページ上で公開しています。


14. 経営コンサルによるJICA案件の受注

最後に、経営コンサルティング企業がJICAから案件を受注するケースについてご紹介します。経営コンサル企業はこれまで主に営利企業を対象にビジネスをしていましたが、近年はドリームインキュベータやデロイトといった大手がJICAの案件を受注することが増えてきています。ざっと調べた限りではアフリカよりもアジアの案件が多いようですが、今後アフリカの案件も増えていく可能性があります。

一方で、前回の記事でも軽くお伝えしましたが、開発コンサル企業がJICAの民間連携などのスキームを使って営利企業向けのサービスを提供することもあります。そのため将来的に経営コンサルと開発コンサルの垣根はなくなっていくかもしれません。


まとめ

調べてみて、ここ10年ほどの間に設立された企業が多い印象を受けました。もちろんベンチャーなどの中小企業を中心に取り上げたのでそのぶん若い企業が多いのもありますが、私が大学生のころと比べるとアフリカに関わる日系企業は増えているような気がします。社会課題解決型の企業の増加やアフリカ経済への関心の高まりが背景にあるのかもしれません。とても良い傾向だと思います。

また、営利活動の持続性の高さをあらためて実感しました。寄付や助成金を財源とする非営利活動と比べて、事業自体から収入を得られる営利活動は赤字にならない限りずっと続けられるという強みがあります。一方で非営利活動でしか対応できない領域もあるので、営利活動と非営利活動をうまく組み合わせられれば営利・非営利両方の活動の幅がもっと広がるのでは、という気がしています。例えば類似の事業を複数地域で実施し、収益性の高い地域(人口密集地など)で得た利益を使って収益性の低い地域(人口分散地など)での活動費用を補填する、というようなことが考えられるのではないかと。

昨年の転職活動中、アフリカに関わる営利企業を調べようとしても取っ掛かりになる資料がなくなかなか苦労しました。これが開発コンサルであれば『国際協力キャリアガイド』が助けになりますし、営利企業全般については『会社四季報 業界地図』などを読むことである程度把握できますが、アフリカの日系企業に特化した類似の資料はほとんど見当たりませんでした(*)。それもあって、今回自分の気になった企業だけでも紹介してみました。

(*)例外として、Africa Business Partnersの出しているリストは網羅的で助かります。ただ、掲載企業数がとても多いので全ての企業を調べることは難しく、ある程度自分でピックアップする必要があります。

ちなみに、今回取り上げた企業のなかには公式や代表者のツイッターアカウント(未だにXという名称に抵抗がある)で情報を発信しているところもあるので、フォローしてみるのをおすすめします。特に企業同士が相互フォローなことも多く、気になる企業を一社見つけたらそのアカウントのフォロー先を辿ると別の面白い企業が見つかるかもしれません。それではまた。

(帰国直前に撮ったナイロビの空)


2023年11月18日土曜日

NGOと開発コンサルはどう違うのか【事業規模、活動地域、etc.】

  急に冷え込みが厳しくなった今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。私は最近ようやく転職先が決まり、新しい職場で働き始めたところです。転職活動ほんとに長かった……

 なんでそんなに時間がかかったのか、とか新しい会社(NGOではなく企業に転職しました)はどういうところなのか、とか説明し始めると長くなるのですが、そのあたりの話はまた別の機会にしようと思います。

 タイトルにある通り、NGOと開発コンサルティング企業の違い」が今回のテーマです。実のところ転職先はNGOでも開発コンサルでもないのですが、転職活動中に開発コンサルについても色々調べたのでせっかくなら共有したいと思った次第です。なお、主なソースは知人への聞き取りとインターネット検索になります。

 国際協力のアクターはNGOと開発コンサル以外にも色々ありますが、今回この2つを取り上げたのは両者が以下のような共通点を持っているからです。

・民間の組織

・現場での仕事が多い

・支援事業を行っている

 ここで「支援事業」と呼んでいるのは「サービスの受け手から代金を取らない事業」という意味です。開発コンサルがJICAと契約して得る資金は会計上で事業収益にカウントされますが、その資金はODAから出ており、現地の人々から対価を得ているわけではありません。この点で開発コンサルが主として行う事業は民間のソーシャルビジネス企業と内容が異なっており、むしろNGOに近いといえます。

 このように似ている両者ですが、使っているスキーム(資金源)やそれによる制約、事業内容の傾向といったいわゆるビジネスモデルについては色々な違いがあるようです。NGOや開発コンサルに関わる/将来目指している方々のお役に立てば幸いです。

(*)私の所属していたNGOは日本に本部を置く日系NGOなので、この記事でも基本的には日系NGOを念頭においています。海外アライアンス系の大規模NGOなどは事情が異なるとも聞くのでご注意ください。

また、今回は内容が多岐にわたるので目次を作りました。以下から興味のある項目に直接飛べます。



(旅行で行った銚子の海。無職期間を使ってしっかり充電。)

事業規模の違い

 「NGOと開発コンサルの違い」と聞いてまず真っ先に思い浮かぶのはこれではないでしょうか。NGOは比較的小規模な事業を行い、大規模な事業は開発コンサルが行う、というイメージを持つ人は多いと思います。実際は例外も多いので必ずしもそうとは言い切れませんが、少なくともダムや幹線道路、港湾、発電所といった巨大なインフラの建設は開発コンサルの領分と言えます。開発コンサル企業のなかでも、日本公営やオリエンタルコンサルタンツなどのいわゆる「ハード系」と呼ばれる企業がこうした大規模建設案件を受注しています。

 一方で、インフラ建設に強いと言われるNGOも存在します。実を言うと私の前々職がまさにそういう団体でした。しかしここで言うインフラとは井戸や貯水タンク、個人の住居などで、カバー範囲は村1つ分あるいは難民キャンプ一区画分くらいの規模感です。これでも日本のNGOが行う事業としては大きいですが、上述の巨大インフラのように一つの都市や国全体をカバーするようなものではありません。「インフラ」という言葉は同じでもその内容はかなり異なっています。

 この違いは事業予算の金額にも表れています。巨大インフラ建設は「有償資金協力」または「無償資金協力」という制度を使って行われますが、それら事業は多くが数十億円以上、場合によっては一千億円を超えるものもあります(*)。ただし、後で詳しく見ますが開発コンサルは事業の全てを担うわけではなく一部の業務をJICAから委託するという形のため、事業予算全額を一つの企業が使えるわけではない点は注意が必要です。一方でNGOの事業は一事業あたり大きくても数億円、大半は数百万~数千万円程度となっています(**)

 とはいえ、上記はハード系事業に限った話であり、ソフト系事業では予算金額とカバー範囲は必ずしも一致しません。例えば相手国の政府職員に対する能力強化研修などはソフト系事業に含まれますが、こちらは巨大インフラ建設よりも少額で実施可能な一方、政府職員の能力向上による好影響は国全体に及ぶこともあります。JICA事業のなかでは「技術協力」という制度がこれに相当し、アイシーネットなどソフト系の開発コンサルが主に実施しています。NGOが技術協力事業のコンサルティング契約を受注することも可能で実例もありますが、どちらかというとレアケースに留まっています。

(*)以下のリストで有償資金協力・無償資金協力事業の予算規模を確認していますが、全事業をチェックしたわけではありません。https://www.jica.go.jp/oda/index.html

(**)こちらも全てのデータを確認したわけではないですが、少なくとも私のいた日系の2団体ではそうでした。また、外務省やJICANGO向けに出している助成金(NGO連携無償/草の根技術協力)はどちらも上限が1億円となっています。

(ケニア北西部の道路。この道路はおそらく違うが、日本の支援で建設された道路は世界に数多くある。)


カウンターパートの違い

 NGOと開発コンサルでは、仕事のなかで日頃やり取りする相手が異なります。開発コンサルの場合、ハード系・ソフト系を問わず主に相手国政府の中央官庁または地方行政府(郡・県など)の職員がカウンターパートとなっており、現地の住民や住民組織と一緒に働く機会はほぼないと聞いています。これは、JICA事業の予算規模が比較的大きいことや、その案件形成が相手国政府の要請によって行われることによるものです。

 一方、NGOはより草の根の事業を得意としているため、駐在や出張で現地に行くことが出来れば住民と関わる機会は沢山あります。私自身がこれまで駐在した3つの事業地では、裨益者(サービスの受け手)である住民の方々に話を聞くだけでなく、彼らの一部をスタッフとして雇ったり、住民組織と協働したりするなど、共に事業を進めていくという場面も多くありました。

 多くのNGOはこのように住民密着型の事業を行っていますが、NGOが相手国の政府レベルを巻き込んだ事業を実施することも不可能ではなく、実際そのような例も聞いています。ただし、その場合NGOは自力で現地政府と関係を構築しないといけません。開発コンサルの場合は日本政府と相手国政府間の契約に基づいてJICAが事業を形成してそれを受託するという流れになるため、一から関係を築く努力をしなくてもよいことになります。


危険地域での活動の違い

 治安の悪い地域で活動できるかどうかは、NGOと開発コンサルの大きな違いです。「途上国はどこも治安が悪い」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、実際は国によってかなり異なり、また一つの国のなかでも地域によって様々です。外務省は危険度区分をレベル0~45段階で定めていて、例えばケニアだと以下のようになっています。

出所:https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pchazardspecificinfo_2022T109.html#ad-image-0

 図中の明るい黄色がレベル1、薄いオレンジがレベル2、濃いオレンジがレベル3、赤がレベル4です。数字が大きいほど危険度が高いことを示しています。北東部の治安が悪く、特に東端のソマリア国境沿いが危険とされていることが図から見て取れます。

 開発コンサルの場合、事業の発注元であるJICAの基準に則ります。JICA基準は日本政府機関の中でも特に厳しいと言われており、例外はあるものの基本的にはレベル1までしか行けない(*)とのことです。ですので激しい紛争地はもちろん、私が駐在していたカクマのあるトゥルカナ郡(レベル2)への渡航も難しいと言えます。

 一方、NGOODA資金を使っている場合は渡航制限が付きますが(**)、私の実感としてレベル2までであればそこまで煩雑な手続きなど無しで入ることができます。レベル3になると渡航の必要性の有無や滞在期間など厳しく見られるようになりますが、それでも条件をクリアすれば渡航できなくはないです。ただし、実際に情勢の不安定な地域に邦人を送るかどうかはその団体の判断によります。そうした地域での安全確保のノウハウがあることが前提になりますが、加えて団体のカラーも大きく影響します。できる限り邦人スタッフを現地に送ろうとする団体もあればあまり積極的でないところもあり、NGOに入れば確実に現地に行けるというわけでもないため、就職を考えている方は事前に確認されることをオススメします。

 また、いずれにせよODA資金ではレベル4地域への渡航は不可能なので、そうした地域で事業を実施するには寄付や他の助成金などで資金を獲得するか、邦人を派遣しない形での事業を組み立てる必要があります。例えばソマリアは全土がレベル4ですが、寄付等の財源を使って現地で活動しているNGOもあります。また、JICAのソマリア事業は相手国政府の要人をケニアやウガンダなどの近隣国に招聘して彼らに対し研修を実施するという形で行われており、そこに開発コンサルティング企業も関わっています。このような事業であればJICAの安全基準でも実施できます。

(*)正確には、レベル2まではJICA事務所と担当者によっては交渉次第で入れる可能性があるが、レベル3以上は不可(少なくとも前例が知られていない)とのことです。(2023/11/19追記)

(**)NGOの渡航制限についてより詳細な内容に追記・変更しました。(2023/11/19)


「開発」と「緊急」について

 これは私自身NGOに就職するまであまり意識していなかったのですが、「開発支援」と「緊急人道支援」はその目的や進め方が異なります(*)。開発支援はその国や地域の社会全体が長期的に発展していくことを目指しているのに対し、緊急人道支援は災害や紛争を受けて今まさに生命の危険にある人を助け、最低限以上の水準の生活を営んでもらうことを目指しています。そのため、開発支援事業は長期にわたって色々な要素を勘案しながら関係者間で合意を取りながら進めていく一方、緊急人道支援事業はスピード命で目に見える成果(物資配布数、住居建築数など)を追求する傾向にあります。 

 開発コンサル企業はその名の通り開発支援を行う企業ですので、緊急人道支援は基本的に対象外になります。NGOの場合は各団体により異なり、どちらかあるいは両方を行っています。日本ではジャパン・プラットフォームというところが緊急人道支援NGOへの助成を行っているので、ここの加盟団体一覧を見るとどんなNGOが緊急人道支援を行っているかがわかります。また、赤十字や緊急援助隊なども緊急支援の重要なアクターです。

(*)とはいえ開発支援と緊急人道支援は明確に分かれるものではなく、むしろ両者をどうすれば上手く繋げられるかが業界内ではずっと議論されています。

(ケニア北西部で見たラクダの群れ)


事業企画ができるかどうか 

 「事業を企画できるかどうか」(少なくとも制度的に可能かどうか)(*)という点もNGOと開発コンサルの大きな違いです。言い換えると「どういう事業をやるか自分で決められるかどうか」ということです。

 それは当然できるだろうと思われるかもしれませんが、開発コンサル企業の場合は難しいことがほとんどです自分たちだけで一から十まで企画をするということはありません(*)。というのも、JICAがすでに作成した事業計画があり、開発コンサル企業はその実施業務をJICAから受注するという仕組みになっているからです。JICAが作成した事業計画書に対して改善案を提示することはあり(*)、また事業を実施しながら現地の状況にあわせて修正することも出来ますし、そこに開発コンサルタントの専門性が求められているわけですが、例えば事業目的や事業目標を変えるというような抜本的な変更は出来ません。逆にJICAは現場での事業実施に深く関わることはほぼ無いと聞きます。つまりJICAが企画、開発コンサルが実施という分業体制が敷かれているわけです。「企画ができない」というとネガティブに聞こえますが、日々の事業活動に集中してその専門性を磨きたいという人にとっては開発コンサルが向いていると言えそうです。

(参考:https://jica.go.jp/about/announce/beginner/activities/index.html

 ちなみに、事業計画を策定する前の調査案件というものがあり、それを開発コンサルが受注することもあります。この場合は開発コンサルが事業企画に深く関わっているといえますが、そうすると逆にその事業を実施する際の入札には参加できないため、いずれにせよ一つの事業の企画と実施両方はできないようです。

 NGOの場合はNGO自身が事業内容を決めるので、企画と実施が一体になっています。助成金を使う場合はドナーの意向が影響しますがそれでも事業内容を決めるのがNGOという点は変わりません。ただ、じゃあNGOなら自分たちの目的に沿った事業を自由に立案・実施出来るかというと経験上そうでもないことが多く、その団体とポスト次第という印象です。

 例えば私の前々職のNGOのケニア事務所は国代表が事業企画を主導していて、本人の手腕の高さもあり比較的上手くいっていました。このようにNGOに入って事業の企画から実施まで一貫して主導するのも不可能ではありませんが、あくまで裁量権のあるポストを取れればの話である点は注意が必要です。活動のための十分な資金があるか、または自分でそれを取ってこれる腕があるかも重要になります。

 絶対に企画をやりたい、あるいは企画だけがしたいという場合は、NGOや開発コンサルよりもJICAが良いと言えそうです。特に在外の企画調査員は名前の通り事業企画が仕事で、一定の裁量を持って事業の企画が行えるとのことです。ただし、JICA事業はそもそも相手国政府の要請に基づいて行われるため、事業の必要性や有効性を政府の担当者に認めてもらい、彼らの側から要請を出してもらう必要があります。

(*)頂いたコメントに基づいて表現を加筆修正しました。(2023/11/19)


働き方や待遇など 

 私の知る限り、待遇については各団体やポジションによるため一概に言えません。NGOの給与は低いとよく言われますが団体によってはそれなりの額が出ますし、逆に開発コンサルに転職したら給与が下がったという例もあると聞きます。職位や専門性の有無によっても変わってくるため、これについては自分の能力と募集状況を照らして判断するしかなさそうです。労働時間やワークライフバランスについても同様です。

 一方で、内部の人材育成制度については開発コンサルの方が整っているようです。 NGOも開発コンサルも即戦力を求める傾向にありますが、後者は新卒採用をしている企業が多いこともあって人を育てる意識があるとのことです。(これについてはもっとNGOも見習った方が良いのでは、と個人的には思っています。。。)

 また、JICAが開発コンサル企業を選定する際にコンサルタント個人の経験年数を重視していることから、開発コンサル企業の評価制度は年功序列的な側面があると聞きます。ただし、JICA基準とは別に内部での職位を設定してそちらは能力重視にしている企業もあり、また若手のうちから事業内容に深く関わる業務を任せることもあるため千差万別とのこと。NGOも裁量権は団体とポジションによりまちまちです。

 駐在の有無について、開発コンサル企業の場合は基本的に出張のみで駐在はないとのことです。ただし1回の出張が数週間~1ヶ月くらいあり、また複数案件を掛け持つためそれらを合算すると1年のうち半年以上海外にいるというケースが多いようです。開発コンサル企業からJICAへ出向する場合は現地駐在もありますがそれはレアケースとのこと。

 NGOはポジションによって駐在も出張もあり得ます。こちらの事情を聞いてもらえるか事業の都合によって派遣が決まるかはその団体次第となります。上述したようにあまり現地へ人を送っていない団体もあり、その場合は出張すらなかなか行けないこともあります。逆に日本をベースに働きたい人が積極的に邦人を外に出している団体に入ってしまってもミスマッチになるので、自分の希望と合っているか見極める事が重要です。

(バングラデシュの難民キャンプ。邦人派遣に積極的な一つ目のNGOでは、3年半で3事業地の駐在を経験した。)

収益事業について

 ここまで支援事業を念頭にNGOと開発コンサルの違いを見てきましたが、最後に収益事業についても触れておきたいと思います。ここで収益事業とは「サービスの受け手から代金を受け取る事業」を指します。味の素の栄養サプリメントやサラヤのアルコール消毒剤など、製品の販売という収益事業が途上国の生活改善に繋がっている事例は沢山あります。

 まず開発コンサルティング企業については、営利企業ですので収益事業を行うことになんの制限もありません。コンサルティング企業という特性から、自社で直接事業を行うよりも、海外で自社製品を販売したいと思っている日本企業に対して市場調査や営業戦略提案などのコンサルティングサービスを提供することが多いです。JICAにも民間連携というスキームがあるため、これを受注する形で実績を作り、そこから営利企業との直接契約に繋げています。

 次にNGOについて。「特定非営利活動法人」という法人格であることから(*)収益活動は出来ないと誤解される事が多いですが、実を言うとNGOも収益事業を行う事が認められています(収入に占める寄付の比率の下限などいくつかの条件あり)。収益事業を行いその収入で固定費を賄うことが出来れば財務が安定し、活動の幅も広げることが出来ます。

 しかし、実際のところNGOで収益事業を上手く行っているのはレアケースで(**)、まして固定費を全て賄うことに成功している団体というのは聞いたことがありません。例外として、ビル・ゲイツ財団や笹川平和財団といった財団は営利事業から得られた利益を元に創設・運営されていますが、営利事業と支援事業が基本的に切り離されているので「収益事業で成功しているNGO」とは違うタイプと言えそうです。

(*)NGOは「非政府組織」で、「非営利法人」はNPOなので厳密には異なる概念ですが、日本のNGOの多くは法人格としては認定NPO法人です。詳細はこちら参照。

https://nponews.jp/article/npo-ngo/

(**)国際協力NGOの資金調達状況についてはこちらの報告書が参考になります。

http://kansaingo.net/kncnews/jigyo/20230407.html

 

 最後に、今回調べるうえで役立った資料を紹介します。

 一つ目は国際開発ジャーナル社の発行する『国際協力キャリアガイド』です。特に開発コンサル企業について一社ごとに紹介されているので、それぞれどんな特色や強みがあるのかを把握するのに役立ちます。アマゾンなどで購入可能です。

 もう一つは、『国際協力をしごとに。』というサイトです。開発コンサルとNGOを経験したクオッカ氏という方が運営されていて、それぞれの仕事内容や必要スキル、転職のコツなどが詳しく説明されています。JICAや国連を扱った記事もあります。

https://www.quokkablog.net/

 

 以上、NGOと開発コンサルの違いについて長々と書いてきました(過去最長を更新してしまったので次回はもう少し短くまとめられるように頑張ります。。。)。なるべく裏取りをするようにはしていますが、もし間違っている点などあればどんどん指摘してもらえると有り難いです。それではまた。

 


2023年6月24日土曜日

日本の国際協力NGOを経験して考えたこと【またも転職活動中】

  梅雨真っ只中のこのごろですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。私はタイトルの通り今日も元気に無職を満喫しております。

 「なんか前回もそんなこと言ってなかった?」という声が聞こえてきそうですが、はい、その通りです。去年の前半も転職活動をしており、ちょうど1年前くらいにとあるNGOに入ったのですが、諸般の事情によりそこを先日退職することになりました。今は絶賛転職活動中です(去年よりも頑張って色々受けていますが、そのぶん苦戦しています……)。

 退職に至る経緯を詳細に書き始めるとキリがないのでその代わりに、前職と前々職の2つの国際協力NGOで働くなかで見えてきた問題点について書いていきたいと思います。

 前職と前々職はどちらも日本に拠点を置く国際協力NGOですが、組織の規模やカルチャー、意思決定ラインなどはかなり違っています。同じNGOという業態でここまで違うのかと驚きましたが、一方で両者に共通する課題もあることに気づきました。

 「この課題は他のNGOにも当てはまるのでは?」と考え、思考を整理するためにも一度ブログにまとめてみようと思った次第です。(そういう意図なので、決して前の職場に対する不満をぶちまけたいというわけではないです笑。良いところも色々ありましたし。)

 NGOで働くことを考えている人はもちろん、国際協力業界に関心のある人にとって少しでもお役に立てば幸いです。

※ ちなみに、私がいたのはどちらも日本に本部があるNGOでした。聞いた話ですが、Save the ChildrenやWorld Visionなど、グローバルに展開している巨大NGO(いわゆるアライアンス系)の日本支部はだいぶ状況が違うようです。

〈散歩中に撮った紫陽花〉

課題は「戦略性の欠如」

 
 さて、では日本のNGOが抱えている課題とは何なのか?それは、一言で言うと「戦略性に欠ける」ことだと考えています。要するにいつも行き当たりばったりということです。

 事業の戦略を立てるとき、少なくとも次の2つの項目を考える必要があります。

事業内容:どの国のどの地域で、どういう分野・内容の事業をやるか。
資金源:事業のための資金をどう確保するか。

 特にNGOのように社会問題を解決することを目的としている組織であれば、「解決したい問題」がまずあり、そのためにどういう事業が最も効果的かを考え、必要なコストを算出し、その額をどうすれば調達できるか考える、つまり①事業内容→②資金源というのが本来あるべき順序です。
 しかし、実際は資金源ありきで事業が組み立てられていて、しかもその資金調達が行き当たりばったりで行われている、というのが私のいた組織の現状でした。

 NGOの資金調達の方法は大きく分けて「寄付」と「助成金」の2つがあります。助成金とは、外務省や国連、ジャパン・プラットフォームといった助成元に対して「こういう事業をやるので○○円ください」という内容を書いた申請書を提出し、審査を通過することで獲得できるお金のことです。
 助成金は申請した事業以外には使えませんし、活動の進捗を助成元に報告しなければならないなど、寄付金と違って色々な制限があります。それでも、私のいたどちらの団体も活動資金の多くは助成金でした。これは何と言っても一回の申請で得られる金額が寄付よりも大きいためです。数千万~数億円の事業資金が一回の申請で得られるのであれば、少額のクラウドファンディングを繰り返したりマンスリーサポーターを増やすため地道に努力したりするよりも手っ取り早いというわけです。

 一度に大きな事業資金を得られるというメリットのある助成金ですが、デメリットもあります。それは「一度きりの収入」であり、かつ「支出できる期間が決まっている」という点です。助成金はある特定の事業を行うという目的のもと受け取っているお金なので、その事業の終了後も活動を続けるためには次期事業のための申請を新たに行う必要があります。事業期間も申請時に決まっているので、多少は延長できますが基本的にはその期間内に予算を全て使い切らないといけません。
 そのため、助成金だけで回している場合、極端に言えば「今期は助成金が取れたから事業を実施するけれど来年以降どうなるかは分からない」という状況が延々と続くことになります。来年も助成金が取れれば事業を継続するが、そうでなければ縮小or撤退するというわけです(しかも大体それが決まるのは現在の事業が終了する直前だったりします)。

〈申請書作成のイメージ。いらすとやって便利ですね〉

行き当たりばったりだと何がまずいのか


 日本のNGOの現状について、戦略性がなく助成金ありきだと述べてきましたが、「そもそもそれの何がいけないのか?」と思った方もいるかもしれません。「行き当たりばったりでもなんでも事業をすることで現地の人々を助けられるなら、戦略なんてものに時間を使うより今やっている事業にしっかり集中すべきではないか。」と考える人は関係者の中にも多いです。そこで、戦略性が無いことでどういう問題が起こっているのかを以下に挙げたいと思います。

 まず第一に、「資金を集めやすい地域や内容にばかり支援が偏る」ということがあります。当然ですが、助成金には助成元の意向が強く反映されています。なので助成元にとって関心が高い地域の事業は助成金が獲得しやすく、そうでなければ難易度は跳ね上がります。例えば、ウクライナは去年他のどの国よりも多くの人道支援を受けましたが、同国と同じかそれ以上に紛争の被害が深刻な国はより少ない支援しか受けられていません。
 地域だけでなく事業内容や支援対象についても同様で、以前ブログに書いた「難民に支援が集中し地元民が置き去りにされる」という問題も、その原因の一つには助成元の意向があります。そのため、助成金ありきで事業を行っている限り、「支援を必要としているのに国際社会からほとんど注目されていない人々」はいつまでも取り残されるということになってしまいます。

 「現在の予算規模の範囲内で出来ることしかやらない」ことも問題です。本来は現地の課題に対してベストな解決策を実行すべきですが、予算が足りないためにその場しのぎの解決策を取ってしまう、ということがしばしばあります。
 例えば、ある村が水不足に陥っているとします。村には井戸が1つありますが、壊れていて使えないだけでなく、万全の状態だとしても村人全員をカバーできるだけの揚水量がそもそもありません。この場合、水不足を長期的に解決するには既存の井戸以外の水源を確保する必要があります(新しく井戸を掘る、他の村の井戸から給水パイプを引いてくるなど)。ですが新たな水源を確保できるだけの予算がなければ、今ある井戸を修繕して少しでも状況を改善するという方策が取られます。それでも何もやらないよりはマシですが、長期的に見れば問題は残り続けたままです。

〈ケニアの涸れ川(再掲)。アフリカには水不足に苦しむ地域が多数ある〉

 事業を通じて現地の課題を長期的に解決できたかどうか、言い換えると「事業が現地社会にどんなインパクトを与えたか」については、そもそも充分に検証や評価がされないことも多いです。何人に食料を配ったか/井戸を何基建設したかというような事業期間内で測れる短期的な成果は比較的簡単に評価できる一方、「それによって人々の栄養状態や水衛生状況がどう改善したか」というのはすぐに結果が出るものではなく、数年単位で経過を追っていく必要があります。ですが事業終了後に発生する費用は助成金によってカバーされないこともあり、こうした長期的インパクトの検証が行われることは稀です。
 緊急人道支援ならともかく、開発支援は社会の長期的な発展を目的としているので、「本当に現地の社会を変えられているのか?」という根本的なところが有耶無耶になっているのは見過ごせない問題です。

 さらに、資金調達が行き当たりばったりであることは人材戦略にも影響を及ぼしています。人件費も助成金から出ているため、どの国や事業地にどれだけ人を配置するかはどれだけ助成金が取れたかで決まることになります。助成金が取れるかどうかはもちろん提案書の質にもよりますが、一方で運の要素も大きいです。また、提案書の質も個人の力量で決まるというよりはチーム全体で作り上げる側面が強くあります。
 そのため特に若手のスタッフは、今期の事業で高い成果を出したけれど来期は助成金が無いために同じ事務所に残れない、という憂き目に遭うこともしばしばです。常に次のポジションを探さなければならないという点は国連も同じですが、国連は大抵の場合一回の契約で少なくとも1年はポジションが確保されるのに対し、NGOは解雇されることこそ稀な一方で配属については(少なくとも私のいた組織では)下手すると半年から一年未満で異動になることもあります。
 こうなると、成果を出したのに評価されないという不満が溜まりますし、半年先も見通せない状況が延々と続くこと自体ストレスになります。NGOでは若手職員の定着率が低いとよく言われますが、その原因の一つには「成果と配属が連動していないこと」があるように思えます。

〈思わずツッコまざるを得ない〉

 それでもお金がなければ事業も何も出来ないのだから仕方ないと言うのであれば、どうしたら充分な資金を集められるのかより一層考えて行動に移すべきです。
 なかでも、寄付金の獲得を増やすことはとても重要だと感じています。寄付金は助成金と違い受け取った団体が自由に使える資金なので、助成元や国際社会の意向に左右されずに事業を続けるための強力な手段となります。もちろんどのNGOも寄付金募集のための広報や渉外活動を行っているものの、その規模や成果は団体によってまちまちです。広報・渉外は私の専門ではないので具体的な手法の話はしませんが、そもそも組織のトップがその重要性を理解して必要なリソースを割くことが第一に求められます。
 また、助成金をメインの資金源にする場合でも、申請する本数を増やして助成元を多角化することでリスクを分散することは可能です。1つの助成元の資金で1つの事業しか行っていない団体はそこからの資金が途絶えれば撤退するしかありませんが、10の助成元から資金を獲得している団体は仮に2~3個取れなくなっても事業を継続することができるため、ある程度長期的な見通しをもって事業計画を立てられます。私のいた組織では(事業地によりますが)大抵1~2種類の助成元しか活用していなかったので、まだまだ改善の余地があります。

〈去年ナイロビ出張で撮った写真。向こうの植物は攻撃力が高そうな見た目をしている〉

戦略がなくても「生き残れてしまう」業界


 ここまで、日本の国際協力NGOの抱える課題について自分の経験を基に色々書いてきました。ですが、これを読んでいる方の中にはもしかしたら「一括りに『日本のNGO』と呼んでいるけど単にその2団体だけの問題じゃないの?現にうちの団体はちゃんとやっている」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。日本には数多の国際協力NGOがあるので、これらの課題にきちんと対処されているところも当然存在するだろうと思います。

 それでも、私はこれらの問題を日本のNGO業界全体に関わるものだと考えています。私のいた組織はどちらも設立からそれなりの年数が経っており、つまり戦略性がなくても今日まで組織として存続できています。これは言い換えると「戦略を立てて運営している団体は生き残り、そうでないところは衰退していく」という淘汰圧がNGO業界の中に存在しないということです。組織が立ち行かなくなるかもしれないという危機感がないので、「これまでと同じで良い」と考えてしまうのも無理はありません。
 淘汰圧があろうとなかろうと、問題解決にこだわって戦略を立てることは不可能ではないですし、実際そのようにされている団体があるとも聞いています。しかし、外圧がない中でそれを続けるにはマネージャー陣、特に組織のトップに相当強い意志が求められます。それは簡単なことではないので、現状そうした団体はレアだろうと予想しています。
 とはいえ、「優れた団体だけが生き残る」というシステムが良いかというと、それはそれで別の問題が生じそうなのが難しいところです。そもそも世界的に見て支援の量はニーズに対して全く足りていませんし、事業地レベルでみると「この村は一つの団体からしか支援を受けられていない」というケースがよくあり、そういう場合にその団体が淘汰されると村の人々は必然的に困窮してしまいます。なので安易に競争原理を持ち込むべきではないですが、「では淘汰せずに業界全体のレベルを上げるにはどうすればよいか?」という問いの答えはまだ見つかっていません。。。


 さて、長々書いてきましたが今回はこれで以上になります。なんだかずっと偉そうな感じになってしまいましたが、NGOで働いている人を責めることが目的ではないということは一応念押ししておきます(むしろ私自身が内部にいたので、その場にいながら変えられなかったことへの自戒という感じです)。
 NGOの事業戦略や資金調達について「うちではこうしてるよ!」という事例があれば是非お聞きしたいので、お気軽にご連絡頂けると嬉しいです。また業界全体の取り組みなどがあれば教えて頂けると助かります。今回は日本の話でしたが、他国ではどうなのかというのも気になっているところです。

 そんな感じで、またしばらくは転職活動とフランス語漬けの日々になりそうです。……なんかこう書くと本当に去年と全く同じことをしているようで笑えないのですが、実際やっている中身はけっこう違ってたりするので、落ち着いたころにそのあたりのことも書くかもしれません。それではまた。

〈先日個展を観に行った銀座・奥野ビル。なんだかんだ無職を楽しんでます〉

2022年11月7日月曜日

転職期間中の生活について【優雅に無職生活?】

 徐々に日が短くなっている今日この頃ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。私はというと前いたのとは別のNGOに今年6月に転職して慌ただしい日々を送っております。勤務地は日本ですが、近々ケニアへ出張に行くのでとても楽しみです!前回のブログに書いた通り東アフリカで紛争解決の仕事をしたいと思っていたので、まさにそれが出来る職場に来れてラッキーだなと思っています。  
 
 今やっている仕事についてはまた別の機会に書くとして、今回は転職するまでの期間に何をしていたかについて書いていきます。1月末に前職を辞めてから6月上旬に今のところに入るまでの約4か月間、バイトなどもせず無職で生活していました。この間ずっと日本にいたのであまり劇的な話はないですが、JPOを受けたりフランス語を始めたりと自分なりに有意義に過ごせたんじゃないかと思っています。国際協力業界は転職する機会が多く一定期間フリーになるのはよくあるので、今後のためにもポイントをまとめてみました。

〈昨年末ナイロビから帰国する飛行機の窓から〉

《失業保険の受け取り》  

 前職を辞めてまず最初にやったのが失業保険の受給手続きです。私は受給するのが初めてだったので色々勉強になりました。手続きしたらすぐもらえるものだと思いこんでいたのですが、実際は自己都合退職の場合だと最初の2か月と1週間は支給されないそうです(詳しくはこちら)。 なのである程度貯金を作ってから辞める必要がありますね。とはいえNGOは世間でイメージされているほど給与悪くないのと海外駐在中はけっこうお金貯まるので(なにせ使い道がない笑)、今からNGOに入る人もそんなに心配しなくて良いのでは、というのが私の個人的な印象です。
 また、受給手続きは一回行って終わりではなく、大体月に一度はハローワークに行く必要があります。そのため何か月も海外に行くなどは厳しいかもしれません(もしかしたら交渉できるのかもですが私は今回試してないので不明)。「働く意志があり求職活動をしていること」が受給要件なので本来ならどこに居ても受け取れるべきだと思いますが、なかなか難しそうです。 


〈今年の春のお花見〉

 《自己研鑽》  

 仕事を辞めて時間ができたので、せっかくなら有効活用しようと色々勉強を始めました。特に、前に勤めていた団体は平和構築や紛争解決をあまり専門的にやっていなかったので、それに関する論文やレポートを読んだりしました。この分野は国際機関の中ではUNDPが牽引しているようで色々とレポートが出ています。結局4ヶ月の間には全然調べきれなかったので、今もなんとか時間を見つけて調べようとしているところです(働きながらだとスピードがた落ちですが……1日30時間欲しい)。
 また、フランス語の勉強も本格的に始めました。もともと将来的には中央~西アフリカでも仕事がしたいと考えていたので「いずれフランス語やらないとなぁ」とここ数年ずっと思いながらも、ぶっちゃけ語学があまり好きではないのでずっと棚上げにしていました。ですが、去年ケニアでコンゴ難民の方と出会い、一生懸命こちらと話そうとしてくれているのにそれに応えることができず、これでは駄目だと思ったのが切っ掛けです。
 最初は文法書を買って独学でやっていたのですが、4月からはPreplyというサービスでオンラインのレッスンを受けています。Preplyを選んだのは単に「フランス語 オンライン」とかでgoogle検索して上の方に出てきたからだった気がしますが、自分の都合に合わせて柔軟にスケジュールを組むことができますし、価格もそんなに高くないので重宝しています。カメルーン人の先生を選んだので語学だけでなくカメルーンの社会状況も聞けて勉強になります。


〈ゴールデンウィーク頃に撮ったスカイツリー。久しぶりの国内観光〉


 《転職活動》 

 転職活動については、働いていない分の時間をフル活用して色々なところに挑戦した……と言いたいところですが、実は今所属しているNGOを入れて3つしか受けませんでした。しばらくは無職を満喫してのんびり休養や自己研鑽に充てようと思っていたからです。
  3つ受けたうちの一つはJPOで、ユニセフ東南部アフリカ地域事務所のモニタリング&評価(M&E)担当官に応募したのですが、こちらは書類は通ったものの面接で落ちてしまいました。話し方などでミスをした感覚はあまりないので、単純にM&Eの専門性が弱かったのかもしれないなと思っています。東アフリカで働くのを最優先にして応募先を決めたため、自分のやりたいことや強みのアピールが足りなかったのかもしれません。もちろんドンピシャのポストで募集があることは稀ですが、キャリアの一貫性をもう少し意識しなければと反省しました。
 JPOには落ちてしまいましたが、今いる団体の活動領域は自分の関心分野とかなり合致しているので結果的には良かったなと思っています。この業界にいると「どこで働くかは結局のところ巡り合せ次第」とよく聞きますが、実際私が今の職場に入ったのはたまたま友人が職員募集の情報を教えてくれたからなので、確かに巡り合せは大事だなと実感しています。ただ一方で、東アフリカで紛争予防をする、という軸には拘るようにしているので、多分今のところに入っていなくても同じ分野で働いてはいただろうなとも思います。上で書いたキャリアの一貫性の話とも繋がりますが、自分がなぜこの仕事をしているのかという目的を忘れないようにしたいです。

 
〈去年ナイロビで撮った写真〉

 というわけで、気づけば4ヶ月の無職期間はあっという間に過ぎ去っていきました。無職というと一般的にネガティブなイメージがありますが、長めの休暇を取っていると考えればそんなに悪いものでもないという気がしています。上では真面目なことばかり書きましたが、趣味のキックボクシングを再開したり国内旅行をしたりとしっかり羽も伸ばしてます。こういう期間があってもそれほどキャリアの障害にならないのはこの業界の良いところかなと思います。
 ちなみに今後ですが、しばらくは今の仕事を通じて紛争予防の専門性を身につけるつもりです。加えて、マネジメントの能力ももっと伸ばしたいと思っています。NGO職員(特に事業担当)は何でも屋なところがあるので特定分野の専門性を身につけづらいと感じていますが、逆に言えば事業運営に関しては既に複数の国や分野で経験しているので強みと言えるかなと(マネジメントをするのが結構好きなのもあります)。どうせなら実務だけでなくマネジメント系の資格も取っておこうかと色々検討中です。


〈旅行先の函館で見た夜景〉

 なんだか今回は終始地味な話でしたが、次回はまたケニアやアフリカの他の国のことなど書きたいなと思っています。それではまた。 

2022年3月27日日曜日

ケニアでの駐在生活&近況について【無職を満喫中】

  皆さまご無沙汰しております、いかがお過ごしでしょうか。私は昨年はNGO職員としてケニアで駐在をしていましたが、今年は予算の関係でケニア駐在の枠が無くなってしまったため、退職して今は日本で優雅に()無職生活を送っております。他の事業地の駐在枠などの打診もあったのですが、ケニアを含む東アフリカ地域に関わりたいという気持ちが自分の中で強かったので仕方なくお断りしました。

 なので今回は、ケニアでどんなことをしてきたのか&どうして東アフリカにこだわるようになったのかについて書いていこうと思います。

〈赴任地で撮った写真。空が広くて日差しが強い〉


 昨年の4月にケニアに赴任して首都ナイロビで一月ほど勤務した後、北西部のカクマというところに駐在しました。

 カクマには30年続く難民キャンプがあり(※)、南スーダンやソマリア、コンゴ民主共和国、エチオピア、ルワンダ、ブルンジなど近隣の様々な国からの難民を受け入れています。私のいたNGOはそこで主に水衛生と住居建設に関わる事業を行っていました。

(※)カクマから車で30分ほどのところにカロベエイ難民居住地区という場所もあり、カクマ難民キャンプとカロベエイ難民居住地区の両方で事業を行っています。煩雑になるのでこの記事内では区別せず書いています。


〈キャンプ内に設置した手洗い場と蛇口〉

 水衛生の分野には、上の写真のような水インフラ建設だけでなく衛生に関する啓発活動も含まれます。衛生と一口に言っても色々ありますが、カクマで大きな課題となっているのが野外排泄、つまり人々がトイレではなく建物の影や草むらなどの屋外で用を足してしまう問題です(もし食事中の方がいたらすみません;;)。何故そうなるかというと、トイレ自体の数が足りないことに加えて「そもそもトイレを使う習慣が根付いていない」という要因があります。そこで、コミュニティの人々や学校の子どもたちを集めて、地面に落ちている人糞からハエなどを介して病原菌が飲み水や食べ物に入ってしまう様子を実演する、という活動を行いました。参加者は皆さん顔をしかめたり驚愕の表情を浮かべていて、これまでの自分たちの生活が不衛生だったことに気づいてショックを受けている様子でした。このとき受けた衝撃が大きいほどその後の衛生的な行動に繋がっていくと考えられます。


〈汚染された水のボトルを子どもたちに差し出すが、もちろん誰も飲みたがらない〉

 ちなみに、この活動は私の赴任前から行われていて詳しい記事も書かれているので、詳細を知りたい方は「野外排泄 トリガリング」で検索してみてください。

 また、日本でも最近話題になった「生理の貧困」に関わる活動も衛生啓発に含まれます。布製の生理用ナプキンを配布するとともに、生理とは何か、ナプキンやタンポンをどう使うか、などを伝える講習を実施しました。「生理中に男性と会うと妊娠してしまう」といった誤解もあるので、ディスカッションを通じてそうした誤解を解くのも講習の目的です。
 コロナ渦での支援ということで、感染症の予防行動に関する啓発も行いました。マスクを付けるよう呼びかける、ワクチン接種を促すなどに加えて、「アフリカ人はコロナにかからない」「コロナにかかると必ず死んでしまう」といった色々な誤解を払拭することも目指しました。

〈布製ナプキンの入ったポーチ、月経カップ、使い捨てナプキンなど。講習では実物を見せながら説明していく〉

〈コロナ対策の一環で正しい咳の仕方を伝えている元同僚〉

 住居建設については、以前は建設自体をNGOがやっていましたが、今は難民の人々に現金を給付し、彼らが自分で業者と契約して建設するというやり方がカクマでは主流になっています。なので、住民向けの講習会を開いて業者の選定や契約の際に気を付けることを伝えたり、現場を視察して進捗を確認したり、現金を住民一人一人に送付したりといったことがNGOの仕事になります。住む人自身が家を建てることで建設にかかるコストの節約になるだけでなく、自分の好きなように細かいアレンジを加えることも出来ます。
〈完成した住居。住む人数によって割り当てられるサイズが異なる〉

 また、カクマが位置しているトゥルカナ郡全体が一昨年にサバクトビバッタという害虫の襲来を受けてしまい、牧草や農作物などに大きな被害が出ていました。そこで、害虫の生態や対処法についての講習と、牧草地の建設、農作物の種子配布などをトゥルカナ郡の様々なエリアで行いました。

〈収穫された牧草〉

 こんな感じでカクマでは色々な事業の運営管理をしてきたのですが、難民の人々に対する支援は種類が豊富なだけでなく、啓発や技術支援にはなかなか高度な内容も含まれるというのを現地で実感しました。上で挙げた野外排泄防止の啓発などはどちらかというとベーシックな感じがしますが、例えば他団体がやっていた性暴力・家庭内暴力防止講習では「家族への暴力は『無差別な』『自分で制御できない』暴力ではなく、相手との力の不均衡を利用した選択的なもの(本当に無差別なら自分の家族だけでなく通行人や警察官にも殴り掛かるはず)なので、自分の感情を『制御する』ことが大切」といった内容を男性向けに啓発していました。日本にも家庭内暴力があることを考えるとこれは日本が真似しても良いのではないかという気がします。また、生理に関する講習は女性だけでなく男性に対しても行ったのですが、これも日本が見習える点がありそうです。他にも難民の若者に対してエンジニアリングや語学などのコースを提供する施設があるなど、「難民支援」と聞いてパッとは思いつかないようなサービスも難民キャンプ内で提供されていました。
  
〈生理についての講習でナプキンの使い方を実演する男性参加者〉

 4年前に訪れたバングラデシュの難民キャンプと比べて、カクマは歴史が長いので単なる衣食住に留まらない支援がより一層必要とされている印象を受けました。難民キャンプが長く存続しているのはケニアの周辺国がずっと不安定な状態だからですが、シリアやイエメンなど人道支援を必要としている国や地域の多くも同じように紛争が長引いてしまっています。そのため、緊急で必要な支援を行う人道支援と、より長期的な社会の発展を見据えた開発支援をどう繋げるか、という点が海外支援業界ではよく議論になるのですが、カクマでは特にそれが浮き彫りになっているように感じました。
〈暮らしの中の衛生問題についての対話セッション。カクマでの生活が長くなることで、コミュニティの人々が自分たちの生活について話し合う場の必要性が高まる〉

 また、国際社会からの支援が長期化していることで、難民と地元民の間にある不均衡や対立もより根深いように思えます。上で書いたように難民キャンプ内は比較的色々なサービスが充実しているうえに、第三国定住や留学などで経済的に発展した国へ移住するチャンスもあります(狭き門ですが)。一方カクマ地元民への支援は限定的で、ましてトゥルカナ郡のカクマ以外の場所に住む人々が海外からの支援を受けることはかなり稀です。害虫対策事業の視察でいくつかの村を訪問したとき、「初めて海外から支援してもらえた」という声を聞いただけでなく「干ばつのせいでこのままだと食べ物が無くなってしまう。どうやって乗り切ればいい」と言われたのは衝撃でした。キャンプ内では(減ってきているものの)食料配給があるので、この点でも難民キャンプの方が地元コミュニティよりも良い環境と言えます。
 ただ、他国から逃れてきた難民と違い、ケニアの地元民に対する支援や地域開発は本来ケニア政府が行うものという原則があります。実際に現地政府はNGOや国連とともに人道・開発支援を行っていて、特にカクマのある西トゥルカナ副郡の担当者はとても仕事熱心な方で個人的に尊敬していますが、それでも足りていないのが現状です。そうしたなかで難民キャンプに支援が集中し地元民が後回しにされることは、「支援はそれを最も必要としている人へ」という人道支援の原則と合わないんじゃないか?と現地にいてかなりモヤモヤしました。
〈地元民の住居。上に載せた難民キャンプ内の住居よりも狭く耐久性がない〉

 難民キャンプ内に話を戻しますが、カクマにはかなり多種多様な国や民族の人々が住んでいます。国籍が多様なだけでなく、例えば同じ南スーダン難民でもディンカ人、ヌエル人、アチョリ人、バリ人、ロピット人、……と色々な民族に分かれていて、それぞれが独自の言語や文化を持っています。しかも、母国では対立している民族同士であっても、難民キャンプ内では基本的に共存が成り立っています。私たちが講習を行うときも特に民族ごとに分けたりはしませんし、ディンカとヌエルは南スーダン内戦の二大派閥ですが、ディンカ人の知人曰く彼女にはヌエル人の友人も沢山いるとのことです。これを知ったときは驚きました。カクマに来る以前は「対立している民族同士が顔を合わせたら殴り合うか、少なくとも緊迫した空気にはなるだろう」と勝手に思っていたのですが現実は全く異なっていました(とはいえ少しもわだかまりがないというわけではないようですが……)。現地で難民の人々から色々な話が聞けたおかげで多少なりとも東アフリカ地域の紛争の理解が深まったので、このタイミングで全く違う地域に移ってしまうのはもったいない、というのが東アフリカにこだわっている一番の理由です。

〈それぞれの民族の踊りを披露する人々〉

 それに加えて、アフリカの地方部(田舎)が抱える問題は充分な支援があれば解決するものが多そうだと思ったのもあります。こんなことを言うと長年活動されている方からそんなに簡単ではないと叱られそうですが、支援の量が足りていないのは確かだと思います。トゥルカナ郡の地元の人々が干ばつのせいで食料難に直面していると書きましたが、水不足は家畜の健康を悪化させるため、異なる民族同士で家畜の奪い合いに発展することがあります。特に近年では銃などの武器が使われることで暴力がエスカレートする危険性を孕んでいます。
 
〈干ばつで痩せてしまったラクダ〉

 こうした小規模な武力紛争が特にケニア-ウガンダ間やケニア-南スーダン間の国境地域で頻発しているのですが、この紛争は井戸さえ掘れば解決するのではという気がしてなりません(地下には水の層があるので)。なのにそれが実現していないのは、この問題が国際社会からほとんど注目されていないからだろうと思います。言ってしまえば「辺境地域での小競り合い」なので、世界情勢どころかケニアの中央政府にも大して影響しないと考えられているのかもしれません。ですが国境地域で銃が出回っていることが南スーダンの紛争に影響を与えているとも言われており、東アフリカ地域全体の長期的な安定を考えるなら無視できない問題だと考えています。なので、この地域やこの問題に対してどうやって資金を引っ張って来るか?が重要なポイントになります。これまであまり支援が入っておらず物価も安いので、多額の資金を投入しなくても効果が出るのではと推測しています。見過ごされてきた地域の紛争解決と発展に貢献するというのはやりがいがありそうだな、というのがアフリカにこだわっているもう一つの理由です。
〈大きな涸れ川。地域全体が深刻な水不足に直面している〉

 そういうわけで東アフリカの駐在ポストを探し中ですが、あまり焦らずにむしろしばらく無職生活を送りながら色々と情報収集したいなと思っているところです。特に今後のキャリアについて、緊急人道支援よりも紛争を根本から解決することに関わりたいと思いつつ、具体的にどういう分野に進むかとかどういった紛争を対象にするかとかはわりと未定なので、じっくり考える期間にしようかと。  
 それとせっかく時間があるので、実務には直結しなさそうだけれど押さえておきたい分野についても調べるつもりでいます。なかでも長期的な人口推移と地域開発の関係が気になっています。アフリカはアジアよりも人口密度が低く(カクマはバングラデシュのキャンプほど密集してない)、そのおかげで衛生状態がある程度保たれている側面があるのではと思っているのですが、となるとこれから人口が増え続けるとまずいのでは、という問題意識です。こういう話が実際に影響してくるのは数十年先の未来なので普段の実務にはあまり関わらないかもしれませんが、地域開発のことを考えるのであれば知っておきたいなと思っています。
 あとは語学ですね。コンゴ難民の人と会話できるようになりたいというのもあってフランス語の勉強を始めたんですが、なかなか道のりが険しい……。このあいだ受けたTCF(仏語版のTOEIC)があまりに出来なさすぎて自分で驚きました。人生で受けたペーパーテストの中で一番出来てないかもしれない (運はあまり強くないと思っているので4択でも外しまくってそう;;)。しかも日本にいるあいだ英語力もキープしないといけないわけですが、帰国中はこれが本当に困る。洋画を英語字幕で観るというのをよくやるので、おススメの洋画を教えてもらえると喜びます。
 ……なんか、こうして書くとやることが多い。もっと優雅に暮らすはずだったのにおかしいな??まあでもここ一か月半くらい優雅というよりは怠惰な生活になってしまっているので、いい加減に気合を入れ直した方が良いのかもしれません。上で書いたようなことに関連して良い文献などご存知の方がもしいれば教えて頂けるととても助かります。それではまた。
〈ナイロビのサファリ。大自然を感じられておススメです〉

2021年3月17日水曜日

ブラッドフォード留学記②【ロックダウンで引きこもり生活】

皆さまご無沙汰しております、いかがお過ごしでしょうか。前回投稿から1年以上空いてしまいましたが生きてます。

去年の秋にイギリスから日本に帰国して、今は前と同じNGOの東京事務所で働いています。そして今年4月からケニア駐在として現地に行けることになりました!!(やった~~!)

前からアフリカ駐在になりたいと思っていて、去年授業でガンビアに行ってから余計にその気持ちが強くなっていたので嬉しい限り。

それで、イギリス留学のことはケニアに行く前に書いてしまおうということで今回久しぶりにブログを更新したというわけです(帰国直後に書けって感じですが何せ筆が遅いので……)。

〈帰国直前に行った湖水地方の写真〉

さて、今回は前回書いた留学記の続きということで去年の今頃、20203月以降の話になるわけですが、この時期にはもうコロナウイルスがヨーロッパまで拡大していました。なので317(ちょうど1年前!)から大学の対面授業は全て休止になってしまいました。

イギリスは全土が一時的にロックダウンになったため、ブラッドフォードでもショッピングモールは長期間クローズ、市場やスーパーはもともと短い営業時間がさらに短縮されました。外出すると法的に罰則がつく(例外は有り)ので日本よりも厳しい措置といえますが、それでも日本より感染が拡大してしまったのはよく知られている通りです。その原因が何かは分からないですが、向こうで暮らしていたときの印象としてマスクを着けている人が少ない、というのはあります。多分これまでマスクを付ける習慣が全く無かったのだろうなと。

とはいえ、逆に日本で「感染症対策のために皆サングラスつけてください」と言ってもあまり広まらなそうなので、習慣が無い国でマスク着用がなかなか浸透しないのはある程度仕方ない気もしますね。そう考えると日本にマスクを付ける文化が元々あったのはラッキーなのかもしれません。

〈ロックダウン中のキャンパスの写真。良い天気なのに誰も歩いていない〉

そんなわけで引きこもり生活を余儀なくされたわけですが、私は生まれつきインドア派なので正直ほとんど問題はありませんでした。修論の時期になったらそもそもコロナ関係なく皆引きこもらざるを得ないので、それが少し早まっただけという感覚です。

ただ、それでちゃんと研究に集中していればいいのですが、何を思ったのか麻雀牌を買ったりポーカーのルールを覚えたりとけっこう気ままに過ごしてましたね……(ギャンブルばっかやないか、と言われそうですがお金は賭けてないです)。我ながら自堕落大学生のテンプレ過ぎないか??

そんな感じの生活をしていたので当然修論はギリギリまで追い込まれてピンチだったのですが、何とか〆切前に出して無事卒業することが出来ました(出来てなかったら洒落にならない)。ちなみにテーマは「緊急人道支援の調整システムについて」で、以前このブログに書いたことを深掘りしたような感じです。バングラデシュのロヒンギャ難民支援を事例に選んだので自分が現地にいた時から知っていたことも多かったのですが、やっぱり文献調査を通じて体系立てて理解することで初めて見えてくるものもあるな、と感じました。クラスターシステムがまだまだ発展途上なこととか、調整システムの評価にも色々な軸があることとか、それにしてもIOMUNHCR仲悪いな、とか。

結構面白いテーマだと思うので、関心のある方はぜひ調べてみてください。

〈ロンドンのタワー・ブリッジ〉

そうして9月の上旬に修論を提出して、しばらくイギリス国内を観光してから帰ってきました。引きこもり生活のせいでこれ以上書けることが無いので、今後イギリスに留学する人が知っておくと役立つかなと思うことを二つほど紹介します。

NHSについて

イギリスの国民健康保険制度のことを略してNHSといい、これは6か月以上のビザを持っていれば外国人でも加入できます。加入は任意ですが入っておいた方が良いと思います。そして何より、最初にかかりつけ医(GP)を登録しておくことが肝心です。何故かというと、いざ実際に体調が悪くなったときにGPを登録しようとしてもすぐには新規登録させてもらえない可能性があるからです。

特に私がNHSを利用したのは去年の今頃で、よりによってコロナが拡大し始めたタイミングで喘息になってしまったのでした。一応喘息の既往歴がある自覚はありましたが、過去に症状が出たのは10年近く前の一度きりだったのに何故今!?という。幸いそこまで激しい症状ではなかったですが、コロナなのではとフラットメイトがかなり気にしていて申し訳ないなあと。なのであまり放置するわけにもいかず、かといってこの状況で何の予約もなしに病院に行くのも良くないだろうとまずNHSに電話しました。そこでGPのことを聞かれたのですが、大学入学手続きの時に合わせて登録していたことを私は愚かにもすっかり忘れており、登録していないと答えてしまいました。するとオペレータから「この病院で新規登録するように」と案内されたのですが、その病院に電話してみるとなんと新規登録は1か月待ち!コロナのせいで完全にパンクしているようでした。これはマズイとなって、そもそもGPとは何かなど色々調べたところ入学時に登録していたことが判明して事なきを得たのですが、これが本当に登録していなかったらと思うとゾッとします。

ちなみに、NHSの手続き自体はスムーズでした。電話越しの問診で診断が下されて医師から薬局に連絡が行くため、病院へ行かずに直接薬局へ行って薬を受け取ることができました。ここには日本とイギリスの考え方の違いがある気がします。日本では少しでも体調に違和感があればすぐ医者へという風潮(少なくともコロナ前までは)があるのに対して、ちゃんと調べたわけではないですが恐らくイギリスではなるべく受診者数を減らそうとしているのだと思います。なので問診も対面ではなく電話越しで完結したのではないかと。医師にしっかり診てもらいたい!という人には不満かもしれませんが、私は体調の悪いときはできる限り誰にも会いたくないタイプなので、かなり自分に合っている制度だと感じました。英語で問診に答えなければいけないのが大変ではありますが、それでも体調が悪いなか外出して医師と面談するよりはマシです。

②銀行口座について 

私はSMBCプレスティアの外貨口座を使ったのですが、これがけっこう便利でした。先にポンドを一年で使いそうな金額分買っておくことで為替リスクを減らすことができます(*)。デビットカードを使って口座内のお金を現地のATMから直接引き出すことができ、オンライン決済にも使えます。

なのでこの口座さえあれば現地でほとんど生活に困らなかったのですが、一回だけイギリスの銀行口座からでないとできない支払いがありました。最後の1か月だけ住んだ寮が現金やデビットカードの支払いを受け付けておらず、結局その時は友人に立て替えてもらったのですが、こうしたケースもあるので時間に余裕があるなら現地の銀行口座も開いた方が無難だと思います。また、プレスティアの口座はある程度お金を入れておかないと口座管理手数料を取られるので注意が必要です。

(*)リスクを減らすというのは「振れ幅を減らす」という意味なので、損をしないという意味ではないです。ポンドを買った後に円高ポンド安になったら損になります。(元証券マンっぽい説明)

〈ヨーク城。ヨークはブラッドフォードから1時間程度で行けます〉

最後に、ブラッドフォード留学の特徴をまとめておきます。

・本当に色々な国の留学生と交流できます。これについては多分ブラッドフォードの平和学部がイギリス国内でも随一ではないかと思います。もちろん年によって多少変わりますしある程度国や地域の偏りはありますが、国際色に満ちた環境が好きな方にはかなりおススメできます。

・平和・紛争・開発コースはかなり実務家向けで、留学生の大半が実務家志望あるいは実務経験者になります。上述の通り国籍のバリエーションが豊富なので、授業中に色々な国の事例をもとに議論ができて学びが深まります。

・とにかく気候と食事が厳しいので覚悟した方が良いです(笑……えない本当に)。夏は晩秋~冬よりもマシですが、それはそれで日が長すぎてしんどいですね。朝4時から夜10時頃まで日が出ているので、、。

・ブラッドフォードでいわゆる「イギリスっぽさ」を感じることはまずありません(断言)。なので、イギリスを体感するには観光をおススメします。ロンドン、湖水地方、ヨークなど帰国直前に色々行きましたがどこもすごく良かったのでぜひ。

 

大体こんなところでしょうか。次はケニアのことを書けたら良いなと思いますが、予定は未定です。それではまた。


2020年2月4日火曜日

ブラッドフォード留学記①【イギリスというよりパキスタン?】(後編)


(こちらは「ブラッドフォード留学記①」の後編になります。もし前編をまだ読まれていない方は先にそちらをお読みいただくことをおススメします。)

街や周囲の人々については概ねこんな状況です。色々な国の人々に囲まれてそこそこ楽しく日々を過ごしているわけですが、逆に大変だったことは何か?と聞かれたらダントツで気候と答えます。それくらいヤバいです。
「気候が厳しい」と聞くと多分暑さ寒さが厳しいというのを想像すると思うのですが、イギリスの場合は晴れの日がとにかく少ないことが大きな問題です。もうとにかく毎日曇り、曇り、曇り。しかもブラッドフォードの街並みはほとんど同じ黄土色の壁の建物で構成されているため、視覚的な憂鬱さを増幅します。
9月に来た当初は、空港に着いた日が晴れていたこともあって「なんだ霧の国とかいって全然晴れてるじゃ~ん」などと余裕ぶっこいていたのですが、10月後半から文字通り雲行きが怪しくなり、11月は月末以外ずっっっと曇ってましたね。加えて日照時間自体もどんどん短くなっていくのでかなり精神的にキます。

(曇天。ツイッター等には晴れの写真しか上げてませんでしたが実際はこんな天気の方が多いです。)

12月になるとまた晴れの日が増え始めて、冬至を越えてからは精神的にも多少は楽になりました。なのでとにかく11月が一番しんどかったですね。私は特に青空が見えないとすぐ気が滅入るタイプなんですが、周りの同級生たちもけっこうこの時期調子を崩していたように思います。とにかく日光を浴びたい一心で課題明けの冬休み後半にスペイン南部へ旅行に行ったりもしました(スペイン最高)。皆様がもしイギリスに旅行されるときは冬季ではなく夏季をおススメします。特に11月は絶対やめた方がいいです。青空がなくても気にしない方であれば別ですが。
なお、気温は思ったほど寒くなく、東京と同じかむしろ暖かいように感じます。ただ風はすごく強いです。

 (曇天のリーズ。リーズはブラッドフォードの隣の街です。)

イギリス留学で大変なこととしてまず気候を挙げましたが、おそらく多くの人は真っ先に別のことを思い浮かべるのではないでしょうか。
そう、食事ですね。メシマズ大国として有名なイギリスですが、実際どうかというと……まあ、想像通りといったところでしょうか。。。「必然的に自炊が上手くなる」というメリットがあります。食材は新鮮なものが近場で色々手に入りますし、働いていた時よりも時間があるのでなるべく自炊をするようにしています。ラム肉のトマト煮込み美味しい。
といっても、全ての外食が不味いわけではなく美味しいところもちゃんとあります。私のおススメはインドカレー、中華、タイ料理ですね。
……え、全部外国の料理じゃないかって?フィッシュ&チップスはどうなのかって?
何回か食べましたが、そんなに不味くはなかったです。けどすごく美味しいかと言われると、という感じです。そもそも魚のフライとポテトってそんなに美味くも不味くもならなくない?と思うわけですが、聞いたところによるとものすご~く不味いフィッシュ&チップスが近場で手に入るらしいです。私は怖くてまだ手を出してないんですが、気が向いたら一回くらい記念に食べてみるかもしれません。
というかですね、多分探せばもっとあるんですよ美味しいお店。街の中心部で色々巡ってみるとか隣町のリーズまで出るとか。でもそこまでする気力がわかない。。。あと冷凍食品やチルド食品はわりと充実してるので時間ない日はそういうので済ませたりしてますね。

(※上記はすべて私個人の狭い見識に基づく見解であって、全てのイギリス料理を否定しているわけではないことをご理解いただければと思います。そしてブラッドフォードで美味しいお店を知っている人はぜひ教えてください切実に)

 (おすすめのカレー屋のカレー。ここは本当に美味しい。)

ここまで主に生活面の話をしてきましたが、肝心の学業の方はどうかといいますと、授業かなり面白いです。ブラッドフォードの平和学部は世界的に有名らしいのですが、さもありなん。とはいえ、授業毎に内容やカラーが違うので人によって合う合わないが分かれそうだなという感じはします。
私のイチオシの授業はDr Simon Whitby (https://www.bradford.ac.uk/staff/swhitby)の安全保障論です。国際関係論の理論をしっかりやりたい人はぜひとも取るべきだと思います。また、エッセイの書き方を授業中に詳しく教えてもらえる&ドラフトの添削も細かく見てもらえるというメリットもあります。選択授業で履修したんですが本当に選んで良かったなと。ただ、本当に理論をがっつりという感じで生徒側への要求水準も高めですし、先生ご自身がバリバリの学者肌タイプなのでそういう授業が好きな人向けですね。 
実務寄りでいうと、Prof. Owen Greene (https://www.bradford.ac.uk/staff/ojgreene)は国際機関と協働の研究実績が豊富で、講義中に出てくる事例の量が半端ないです。一体今まで何ヵ国行ってるのか……。大ベテランの教授ですが気さくな方なので質問もしやすいです。前期は安全保障と開発、今期は天然資源の授業(両方必修)を担当されています。色々な国の事例が聞きたい、それらを踏まえた議論がしたい、という人におすすめです。

気になる課題の量ですが、イギリスに来る前に私は「皆寝る間も惜しんで課題をやっていて、そのせいで過労死も出てる」というような話を聞いて内心ビビっていたのですが、少なくとも課題のせいで毎日寝不足ということはないです。普通に平均7~8時間寝ていたと思いますし、週末もわりとのんびりしていました(むしろのんびりし過ぎたかも)。
学期中に提出物が課されることは少ししかなく、日々の課題は指定文献の事前の読み込みが主になります。それもある授業とない授業があるので何を取るかによりますが、毎週毎週課題に追われて他に何も手につかないということにはならないんじゃないかと思います。履修授業以外に聴講を入れまくったりしたら別ですが。
成績評価の対象は学期末に課されるエッセイが大半(授業によっては100)を占めるのですが、こちらは私のエンジンがかかるのが遅かったせいで前期は修羅場となりました。もともと追い込まれないと筆が乗らないタイプではあるのですが、それにしても酷かった……。ただそれでも一応終わったので、多分もっと前から普通に進めていれば普通に終わる量なんじゃないかと思います(なお、終わったというのは規定語数が埋まって提出できたという意味で、無事単位が取れたかは現時点でまだ分かっていません……)。分量は3,0004,000語(日本語換算で10,000字くらい?)×3本(3つの授業で各1本)です。
また、それとは別に学期中にグループプレゼンがある授業もあります。これは評価割合が低いわりに準備に時間がかかり、また誰と組むかによってハードルの高さがかなり変わってくるので、メンバーを上手く見極めるのが最重要になります。私のチームは他のメンバーが優秀で特段大きな問題はなかったですが、他チームは色々苦労したという話を聞くので注意が必要です。

ここまで徒然と書いてきましたが、最後にこの5か月間の総括を少しだけ。
前期の自分を振り返ると、そんなに悪くはなかったですがもう少し色々なことをこなせたら良かったかなという気がしています。特に今後のキャリアについて。休職して来てるので即路頭に迷うというのがないのは有難いことですが、中長期的にどういう方針でいくのかがあまり定まってないのはちょっとマズいなあという感じです。前期せっかく聴講をせずにコマ数を絞ったのにその分の時間何をしていたのかと。 
(まあ何をしていたかというと実は明白で、ひたっっすら動画サイトでゲーム実況を見てたんですが……。)
とはいえ充電期間も大事ですし過ぎたことを悔やんでも仕方ないので、「この年になって平日昼間からあんなにグダグダできたのはむしろ優雅な時間の使い方では?」と思うことにしました。我ながらポジティブ!
 なんにせよ今期は聴講を入れてスペイン語も取ったので、後半戦気合を入れていきたいと思います。キャリアの情報収集も並行していかないとですね。あと直近では、もうすぐ西アフリカのガンビアでの研修旅行があるのでこれはかなり楽しみです(私にとっては初のアフリカです)。できればその内容もブログに書きたいんですが、残念ながら写真のアップNGなんですよね……。セキュリティ上仕方ないことではありますが。なのでそちらはあまり期待せずにいていただければという感じですね。それではまた。

(夕方の大学構内で撮影。12月頃は16時の時点でけっこう暗いです)